株式会社トランスヒューマン

マンガで描く多彩な表現方法が、自分の作品のスタイルになった。アーティスト・ob「オビ」氏。

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陽射しが空から鋭角に落ちてくる午後、僕は広尾に向かっていた。

村上隆氏が率いるアーティスト集団「カイカイキキ」の事務所で、今日は期待の作家・ob「オビ」氏に会う。

アーティスト・ob「オビ」氏は、はにかみながら、僕を待っていた。

「私は中学までは絵を描かなかったんですけど、友達の影響でマンガの模写から、絵の世界に入ったんです。

そして美術高校に進学。高校時代に、ある作家の現代美術展を初めて観て、衝撃を受けたんですね。現代美術の道へすすみたいと強く思うようになった。

私はマンガが好きで、そうした作品を創っていたのですが。現代美術でマンガ的なキャラクターを描いてもいいんだ。

自分の持ち味を出していいんだなと思ったら、ラクになりました。」

 

美術高校時代に、マンガから自分のアートの原点となるヒントをみつけた、ob「オビ」氏。

「いまはムンクに影響を受けています。ムンクの『病める子』という作品が、自分の中では熱いです。

ムンクは、最初は写実的表現の作品を多く創っていて。写実から、抽象的な表現に入った時期の作品が『病める子』なんですけど。この作品には、現実的なものと非現実的なものが交じり合っていて。

こうした表現に、自分も近づきたいと強く感じたんです。

私の作品の、目が大きい女の子は、少女マンガの模写をよくやっていたので。

目が大きい女の子を当たり前のように描いているうちに、自分のスタイルになった。

マンガというのは、目で表現するんですね。目のいろんな表現があって。その目で訴える部分に影響を受けたと思う。」

 

やさしく、そして繊細な雰囲気を醸し出しながら、言葉をひとつひとつ吟味して語る、ob「オビ」氏。

ob
泡沫
2016
キャンバスにアクリル、油絵の具
550 x 654 mm
©︎2016 ob/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

「私の作品を観ることは、例えば、瞑想室に入ったりするのと、同じようなものだと思う。

絵を観ている時間が、自分だけの時間になるような。でもいまの作風を突きつめていくと、究極の完成というのは、死ぬ方向に行ってしまうと思って。

それは自分にとってきれいなものなんですけど。

もっと未完成なものを描きたくて、これからはいろんなモチーフが出てくる気がする。」

 

そこにはアーティストとして、日々、精進し、切磋琢磨しているob「オビ」氏の生活スタイルが垣間見える。

 

「私にとってアートは、信じることができるものです。言葉でのやりとりは、それは本当かなとすごく思ってしまうけど。

作品を観るとあっ本当なんだ、と、すごく感じるので、信じられる。」

少女マンガ特有の世界を、現代美術に取り入れたob「オビ」氏の感性を、僕はまさにネオ感覚だと思った。

ob「オビ」氏のやわらかい視線は、現代美術の向こう側をしっかり見つめていた。

 

撮影:前田 洋一(株式会社スタジオヨンジュウイチ)

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