還暦はこころの20歳。

60歳、男装カフェへ初めて行く。

秋葉原。聞いただけで、僕は、心臓がドキドキしてしまう。

約1年前、メイドカフェに初めて行ってから、秋葉原は、ドキドキする街になっていた。

秋葉原は、ますますカオスの街になり、好奇心満載の街になっていた。

「男装カフェに行きましょうよ」

「エー!!!!」

会社のパリピもどき女子と数字ならおまかせ女子が僕にミッションをあたえてきた。

「いっ、いいよっ」

と言いながら、鉄のように固くなって笑顔を無理につくる。

再び、まな板の上の鯉の心境である。

「QUEEN DOLCE」。

秋葉原ではじめてできたという、老舗の男装カフェである。

男装カフェとは、その名のとおり、女性が男装して、キャストになって接客してくれる、カフェ&バーのことである。

5月の平日のお昼、秋葉原で僕とパリピもどき女子と数字ならおまかせ女子の3人は、男装カフェ「QUEEN DOLCE」を目指していた。

ある小さなビル、エレベーターで4階へあがると、まさに別世界があらわれた。イケメンよりカッコいい、オトコマエガールが、100万ドルの夜景のような笑顔で、僕たちを迎えてくれた。

お店には、3人のキャストさんがいた。

HINAYOSHI君、SEKAI君、IORI君。

「はじめてなんです」と、恥ずかしそうに僕が言う。頭の中は真っ白になった。

男装したキャストさんの顔を見ることができないのである。見たいような、見ちゃだめなような、ドキドキ、バクバク。

僕は、いちごがりという名のカクテル。パリピもどき女子はオレンジ色のラジャネス。数字ならおまかせ女子はファムファタールというバイオレットのカクテルを注文した。

僕は下を向いて、ゴキゴキしていると、パリピもどき女子とHINAYOSHI君がお話しをはじめた。

宝塚のファンであること。スカートは着用しない。普段の服装もボーイッシュであること。

お客さんは、女性だけでなく、男性も多い、仕事帰りに男同士で来店したり、ひとりで来たり、店内が男性だけになることもめずらしくない、憩いの場になっている。

HINAYOSHI君は、男装カフェのキャストをはじめて10年になる、など、とぎれとぎれに会話が聞こえるが、僕は、それどこではないのである。

視線をどこに向けたらいいかわからず、勇気を出してSEKAI君に「あのチェキで写真を撮ってください!」と言うのが精一杯。

ここは超日常の世界なのだ。

男女らしいという不思議な感覚。60歳の頭の中では、考えられない感覚。

目の前に、女性でありながら、男性がいる。これは、なんなのだ。

僕の60年の人生は、なんなのだ。僕は、なんのために60年、生きてきたのだ。

誰か、僕の人生を返して!

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